大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成7年(ネ)3568号 判決

控訴人 金貴順 ほか二名

被控訴人 国

代理人 加島康宏 藤原一晃 ほか一名

主文

一  本件各控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人らに対し、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、北海道新聞及び西日本新聞の各朝刊全国版の下段広告欄に、原判決別紙記載の謝罪広告を、見出しは新聞明朝体二・五倍活字とし、宛名及び謝罪人「日本国」の部分は新聞明朝体二倍活字とし、その他は新聞明朝体一・五倍活字とする様式をもって各一回掲載せよ。

3  被控訴人は、控訴人らに対し、それぞれ金三〇〇万円を支払え。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(控訴人らは、当審において、慰謝料の請求金額を3項のとおり減縮した。)

二  被控訴人

主文同旨

第二事案の概要

本件の事案の概要は、次に加除、訂正するほかは原判決の「事実及び理由」の第二に記載されたとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二丁裏二行目の「三〇〇〇万円」を「三〇〇万円」に、同八行目の「八月一七日午前九時ころ、」を「八月一六日、」に、同三丁表三行目の「貞大を逮捕し、両名を」を「貞大外五名の朝鮮人を逮捕し、同人らを」に、同四行目の「そして、」から同七行目の末尾までを次のとおりそれぞれ改める。

「そして、ミアジマ外一名の警察官が、同月一七日午後一時ころ、同派出所内に拘置されていた慶白及び貞大を含む合計一六名の朝鮮人を小銃で射殺し、そのころ同派出所に放火して右一六名の遺体もろとも同派出所を焼毀した。

二  原判決三丁表八行目の「憲兵ら」を「憲兵、警察官ら」に、同裏一行目の「三〇〇〇万円」を「三〇〇万円」に、同四行目、同七行目、同四丁表六行目及び同丁裏四行目の各「民法」をいずれも「民法七一五条」に、同四丁表一〇行目から一一行目にかけての「変容したのであって」を「変容し、民主主義の原理に抵触する限度でその効力を喪失したのであって」に、同丁裏二行目の「同月一七日ないし一八日に」を「同月一六日から翌一七日にかけて」に、同九行目の「国家無答責」を「国家無答責の法理」に、同五丁表九行目の「立法史」を「立法の経緯」にそれぞれ改め、同丁裏四行目の冒頭に「不法行為は身分行為等とは異なり、」を、同六丁表七行目の「なったのは」の次に「一九八五年の」をそれぞれ加え、同九行目の「事情から、」から同一〇行目の「ものである。」までを「事情が存在し、控訴人らが二〇年の除斥期間内に権利を行使することは実質的に不可能であったというべきである。」に改め、同丁裏一行目の「考慮すると、」の次に「本件に対しては、」を加え、同一〇行目の「回復」を「原状回復の必要性」に、同七丁裏七行目の「一七日」から同八行目の「至る間に」までを「一六日から翌一七日の間に」にそれぞれ改め、同八丁表一一行目の「(1)」の次に「日本も一九一一年に批准した」を加え、同九丁表一〇行目から一一行目にかけての「戦争犯罪として」を削除し、同丁裏四行目の「行われた」を「行った」に改める。

第三当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次に加除、訂正するほかは原判決「事実及び理由」の第三に記載されたとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一一丁表五行目の「よって発生した」を「基づく」に、同丁裏九行目から一〇行目にかけての「八月一七日から翌一八日」を「八月一六日から翌一七日」に、同一二丁表二行目及び同一三丁表三行目の各「民法」をいずれも「民法七一五条」にそれぞれ改める。

二  原判決一四丁表二行目の冒頭から同七行目の末尾までを次のとおり改める。

「控訴人らが主張する国際慣習法の成否についてみると、ハーグ陸戦法規がその根拠となり得ないことは前記説示のとおりであり、本件行為当時、国家が国際人権法や国際人道法上の義務に違反して他国民の人権を侵害した場合に、被害者個人に対して直接損害賠償の責任を負うとの一般慣行が成立し、かつ、その旨の法的確信が存在していたとは認められない。

したがって、控訴人らが主張する国際慣習法は本件行為当時成立していなかったのであるから、国際法に基づく控訴人らの本件請求もまた理由がない。」

第四結論

以上の次第で、控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却した原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がない。

よって、本件各控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 加茂紀久男 北山元章 林道春)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例